【緊急注意喚起】ゲリラ豪雨・台風でバイクが水没!絶対にエンジンをかけてはいけない理由と正しい対処法

近年、毎年のように発生するゲリラ豪雨や台風による水害。大切にしている愛車が、泥水に浸かってしまった…という悪夢のような事態は、決して他人事ではありません。

水が引き、愛車の姿を目の当たりにした時、多くの方が「エンジンはかかるだろうか?」と、キーを回してセルボタンを押してしまいたくなる衝動に駆られるかもしれません。

しかし、その行為は絶対にやめてください!

その一押しが、あなたの愛車に致命的なダメージを与え、修理費用を何十万円も跳ね上がらせてしまう「ウォーターハンマー現象」を引き起こす可能性があるのです。

今回は、水没してしまったバイクへの正しい対処法と、最も恐ろしい「ウォーターハンマー現象」について、ライダーの皆様に知っておいていただきたい知識をまとめました。


■絶対にNG!水没後にエンジンをかけてはいけない「ウォーターハンマー現象」の恐怖

水没したバイクのエンジンをかけようとすることが、なぜそれほど危険なのでしょうか。その答えが「ウォーターハンマー現象」です。

ウォーターハンマー現象とは?

バイクのエンジンは、空気とガソリンを混ぜた混合気をシリンダー内に吸い込み、ピストンで強く圧縮し、点火プラグで着火させることで爆発的な力を得ています。

この「圧縮」という工程がポイントです。気体である空気は圧縮できますが、液体である水はほとんど圧縮することができません。

もし、エアクリーナーなどを通じてエンジン内部(シリンダー)に水が浸入した状態でエンジンをかけようとすると…

  1. ピストンが猛烈な勢いで上昇し、シリンダー内の水を圧縮しようとします。
  2. しかし、非圧縮性の水は逃げ場がありません。
  3. 行き場を失った強大な圧力は、エンジン内部で最も弱い部品であるコンロッド(ピストンとクランクシャフトを繋ぐ棒状の部品)を「く」の字に曲げてしまったり、最悪の場合はクランクケースを破壊してしまいます。

これがウォーターハンマー現象です。一度この現象が起きると、エンジンは再起不能なダメージを負い、修理にはエンジンの分解・部品交換、あるいはエンジンそのものの載せ替えが必要となり、数十万円単位の高額な修理費用が発生してしまいます。

泥水が引いた後、やるべきことはエンジン始動の確認ではありません。愛車へのダメージを最小限に食い止めるための正しい初動です。


■もし愛車が水没してしまったら?冷静に行うべき4つのステップ

焦る気持ちを抑え、以下の手順で対処してください。バイクに触れるのは、状況確認と写真撮影までです。

STEP 1:ご自身の安全確保を最優先に!

何よりもまず、ご自身の安全が第一です。感電などの危険もありますので、水が完全に引くまで無理にバイクに近づかないでください。

STEP 2:水没状況を確認し、写真を撮る

水が引いたら、バイクの状態を確認します。

  • どこまで水に浸かりましたか? (マフラーの排気口、エアクリーナー、エンジン本体、メーター周りなど)
  • 可能であれば、スマートフォンなどであらゆる角度から写真を撮影しておきましょう。この記録は、後の修理や保険請求の際に非常に役立ちます。

STEP 3:【最重要】キーをONにしない!エンジンをかけない!

繰り返しになりますが、これが最も重要です。キーをONにするだけでも、濡れた電装系がショートして故障の原因となります。セルを回すのは論外です。バイクには一切触れず、そのままの状態にしておきましょう。

STEP 4:速やかにバイク販売店・修理工場へ連絡

最善かつ唯一の策は、プロに全てを任せることです。購入した販売店や、信頼できる修理工場にすぐに連絡し、水没してしまった状況を伝え、引き取り(レッカー)を依頼してください。プロは水没したバイクの適切な処置方法を熟知しています。ご自身で何かをしようとせず、専門家の判断を仰ぐことが最も安全で確実な方法です。


■修理費用と車両保険について

水没による修理費用は、被害の程度によって大きく異なります。

  • ウォーターハンマーを起こしていない場合: 各部の洗浄、オイル類やバッテリー、エアクリーナーエレメント等の交換で済めば、数万円〜十数万円程度で済む可能性があります。
  • ウォーターハンマーを起こしてしまった場合: エンジンのオーバーホールや載せ替えが必要となり、30万円〜、車種によっては100万円近くになることもあります。

万が一の際に備え、ご自身が加入している任意保険の「車両保険」が水害(自然災害)に対応しているかを確認しておくことも大切です。


■まとめ:水害に遭ったら「焦らず、かけず、すぐ相談」

大切なバイクが水没してしまった時のショックは計り知れません。しかし、そんな時こそ冷静な判断が求められます。

  • 焦らず、まずは身の安全を確保する。
  • エンジンは絶対にかけず、キーもONにしない。
  • すぐにプロ(販売店・修理工場)に相談する。

この「焦らず、かけず、すぐ相談」を徹底することが、あなたの愛車と、そしてお財布を守るための最善の方法です。この情報が、万が一の際に一人でも多くのライダーのお役に立つことを願っています。

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