【メンテナンス】プロが教える!夏の愛車を守る「熱対策」の基本
うだるような暑さが続く夏。しかし、澄み渡る青空と輝く太陽の下を走るツーリングは、ライダーにとって何物にも代えがたい特別な時間です。そんな最高のバイクシーズンを安全に楽しむために欠かせないのが、愛車の「熱対策」。
人間が夏バテするように、バイクも夏の過酷な暑さで大きなダメージを受けます。特にエンジンの熱は深刻で、最悪の場合オーバーヒートを引き起こし、ツーリングの中断どころか、高額な修理費用につながることも。
そこで今回は、プロの視点から、ライダー自身でできる夏の愛車を守るための基本的なメンテナンスと熱対策のポイントを解説します。「難しいことは分からない…」という方でも大丈夫。少しの知識とチェックで、愛車との付き合い方は大きく変わります。
1. オーバーヒート対策の要!「冷却水(クーラント)」のチェック
エンジンを冷やす血液とも言える冷却水(クーラント)。特に水冷エンジンのバイクにとっては、まさに生命線です。夏本番を迎える前に、必ずチェックしておきましょう。
チェックポイント
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量:アッパーレベルとロワーレベルの間にあるか?
エンジンが冷えている状態で、車体を垂直に立ててリザーバータンクを確認します。液面が規定の範囲内にあればOK。もしロワーレベル以下なら、補充または交換が必要です。 -
色と汚れ:きれいな色を保っているか?
冷却水は緑や赤、青など着色されていますが、これが茶色く濁っていたり、錆やゴミが混じっていたりする場合は劣化のサイン。冷却性能が低下している可能性が高いので、すぐに交換しましょう。 -
交換時期:前回の交換から2年以上経過していないか?
冷却水の寿命は一般的に2〜4年です。長期間交換していないと、防錆効果や冷却性能が落ちてしまいます。車検ごとなど、定期的な交換を心がけましょう。
【コラム】もしもオーバーヒートのサインが出たら?
どんなに気をつけていても、渋滞や高負荷な走行でオーバーヒートの兆候が出てしまうことも。エンジン形式によってサインの出方と対応が少し異なります。慌てずに対処しましょう。
■水冷バイクの場合 比較的サインが分かりやすいのが特徴です。
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主な症状
・メーター内の水温警告灯が点灯・点滅する
・冷却用の電動ファンが回りっぱなしになる
・エンジンの力がなくなる(ノッキングのようなカリカリ音がすることも)
・リザーバータンクから冷却水が沸騰して噴き出す
・焦げたような、あるいは甘い匂いがする(クーラントの匂い) -
対応
1,すぐに安全な場所にバイクを停め、エンジンを切ります。
2,絶対にエンジンに水をかけないでください。急激な温度変化でエンジンが歪んだり、最悪の場合ひび割れたりする危険があります。3,風通しの良い場所で、自然にエンジンが冷えるのを待ちます。
4,エンジンが十分に冷えてから、リザーバータンクの冷却水の量を確認しましょう。
■空冷バイクの場合 警告灯がないため、ライダーがバイクの変化を感じ取ることが重要です。
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主な症状
・明らかにエンジンパワーが落ちる、加速が鈍くなる(熱ダレ)
・エンジンから「カリカリ」「チリチリ」といった異音(ノッキング音)がする
・アイドリングが不安定になったり、エンストしたりする
・オイルが焼けるような臭いがする -
対応
1,水冷バイクと同様、すぐに安全で風通しの良い日陰などに停車し、エンジンを切ります。
2,走行風でエンジンを冷やす構造のため、停車中はなかなか冷めません。とにかくエンジンが自然に冷えるのをひたすら待ちましょう。
3,症状が改善しない場合は、無理せず救援を呼びましょう。
2. エンジンを守る心臓部!夏を乗り切る「エンジンオイル」選び
夏の高温は、エンジンオイルにとっても過酷な環境です。オイルは潤滑だけでなく、エンジン内部の熱を吸収し冷却する役割も担っています。しかし、高温にさらされ続けるとオイルは劣化し、「油膜切れ」を起こしやすくなります。油膜が切れると、エンジン内部の金属パーツが直接擦れ合い、深刻なダメージにつながります。
オイル選びのポイント
夏場は、普段より少し粘度の硬い(数字の大きい)オイルを選ぶのがおすすめです。
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例: 普段「10W-40」を入れているなら、夏場は「10W-50」や「15W-50」を検討してみましょう。
後ろの数字(50の部分)が大きいほど高温時の油膜保持性能が高く、熱ダレ(熱による性能低下)に強くなります。特に渋滞路を走ることが多い方や、高回転を多用するスポーツ走行を好む方には効果的です。
もちろん、定期的なオイル交換が最も重要であることは言うまでもありません。夏を乗り切ったら、劣化したオイルを新しいものに交換してあげることも忘れずに。
3. 意外な落とし穴!「駐車時の熱対策」
走行中だけでなく、バイクを停めている間も熱によるダメージは蓄積しています。真夏の直射日光は、想像以上に愛車を痛めつけています。
駐車時の注意点
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日陰に停めるのが鉄則 最もシンプルで効果的な対策です。屋根のある駐輪場がベストですが、建物の影や木陰などを利用するだけでも大きな違いが生まれます。
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バイクカバーを活用する 日陰が見つからない場合は、バイクカバーをかけましょう。紫外線による塗装の色褪せや、樹脂パーツ、シートの劣化を防ぐ効果があります。熱がこもらないよう、遮熱性や通気性の良いカバーを選ぶのがポイントです。
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ガソリンタンクへの配慮 直射日光で熱くなったタンクは、内部のガソリンが揮発しやすくなります。タンクキャップの隙間からガソリンが滲み出て塗装を傷めることもあるため注意が必要です。また、可能であれば炎天下での満タン給油は避け、少し余裕を持たせておくと内圧の上昇を緩和できます。
まとめ:愛車への思いやりが、最高の夏を作る
今回ご紹介した「冷却水」「オイル」「駐車方法」は、夏の熱対策の基本中の基本です。また、万が一のオーバーヒートのサインを知っておくことも、被害を最小限に抑えるために非常に重要です。
こまめに愛車の状態をチェックすることは、トラブルを未然に防ぐだけでなく、バイクへの理解を深め、より一層の愛着を育むことにもつながります。
万全の熱対策で愛車をいたわり、ライダー自身の熱中症対策も忘れずに。安全で快適な準備を整えて、最高の夏のバイクライフを満喫してください
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